時には効率を度外視してみる

今の世の中はどこにいっても効率化が叫ばれます。少しでも効率的に行動するためのノ ウハウ本も溢れています。短時間で本を読む方法、お客様先に最短時間で訪問する方 法を教えてくれるスマホアプリ、仕事を効率化するためのテクニック、名所を効率的に巡 るための旅行本などなど。 物事を効率的にこなすことは大変重要です。仕事も試行錯誤を続けることで効率的に行 えるようになります。この『効率的』ですが、一般的に言われてる『効率化』は1つのことをこ なすためにかける時間を短縮したり、同じ時間で多くのタスクを行えることに対して言わ れていることが多いと思いますが、無駄なことをたくさん効率よくやっても意味がありませ ん。中身が大切ですね。

旅行でも、旅行先で名所だけを絞ってたくさん回ったけど、現地での滞在時間がほとんど なくて、あまり記憶に残っていないなんてことないでしょうか? 私は以前、イタリアツアーに 行ったことがありますが、9日間で、ローマ、ナポリ、ポンペイ、シエナ、フィレンチェ、ベネチ ア、ベローナ、ミラノなど多くの都市をまわりました。スケジュールがとてもタイトで、現地の 自由時間はほとんどなく、ベネチアのホテルは船で渡った先にあるステキなホテルだった んですが、夜11時頃について翌日5時には出発。ホテルは本当に寝るだけのために泊 まったようなものでした。「行った」という事実だけを考えると効率的に回れたのかもしれま せんが、何のためにそこに行ったのかということを考えると訪問する都市を減らしてでも、 もっとゆっくりしたかったなと思いました。

ある画家の話を聞いたことがあります。美術学校のデッサンで、1つの静物を丸々2日間か けてデッサンしなさいという課題を出されたそうです。その人はある程度訓練をした上で 学校に入ったのでデッサンにも慣れていて、2時間程度で終わってしまい、残りの時間を どう潰そうかと考えていたそうです。そこに先生がやってきて「柱が少し曲がっています ね。」と指摘されたそうです。その時はどう見ても曲がっているようには見えなかったので すが、その後何時間もその絵と実物を見比べていると確かに曲がっているのがわかるよ うになったそうです。そしてその曲がっている部分だけを描き直そうとしたところどうしても うまくいかず、結局すべてを描き直さなければならなくなったという話をされていました。

仕事でも表面的なことがわかるようになったからといって油断していると実は本質的なこ とに気づいていなかったということもあります。大事なことであれば、時には効率を度外視 して、1つのことにじっくりと時間をかけてみる必要があるのかもしれませんね。